あの頃の記憶

早朝、外はまだ真っ暗。布団の中。

どどどどどどどどど

家が激しく揺れるている。

半分夢の中の状態で、

「あぁ、家の前を巨大なバスが走っている」

と思う。

段々覚醒してきた頭で、家の前に車が通れるわけがないことを思い出し、電灯の紐がぐらんぐらん揺れてるのを見て、

「あぁ、地震か」

と思う。

隣の部屋で本がドサドサと落ちる音。

「わぁああああああああああ」

兄が騒いでいる。

揺れがおさまる。

兄が部屋の戸を開け、「大丈夫か?!」と言う。

大丈夫だ。何を騒いておる。と思う。思いながら、もう一度寝る。

いつもの時間に起きる。

テレビをつける。

大阪駅の地下街の天井から水がジャンジャン漏れている映像がうつる。

学校へ行く。

しかし、ほとんどの生徒は来ていない。

先生に

「こんな時に学校があると思ってくるなんて真面目やなぁ」

と言われる。

授業もなく、しばらくして帰宅。

父から家に連絡が入り、西宮のおばちゃんの家族はみんな無事だと連絡がついたと言われる。

まだ何が起こったのか、何がどう大変なのか、テレビからの情報がない。

夜、テレビに映ったのは真っ暗な町、燃える炎。

神戸が燃えている。

翌日、阪神電車が甲子園までなら動いているとわかり、母と兄と行くことに。

父は普段は定時に帰ってくる人だが、帰れない状態。

近所のコンビニで水と非常食になりそうな物を買ってリュックにつめて甲子園へ向かう。

甲子園の駅はひび割れが大きく入って、傾いていた。

自動販売機が全部売り切れて赤いランプが光る。

西宮のおばちゃんの娘の家へ。

おばちゃんの家は壊れなかったが、みんなで一緒にいたいと集まったらしい。

おばちゃんは、勝気で元気で口が達者で職業婦人としての誇りもある元気な人。

家の中にいたおばちゃんは、とても小さくなっていた。

今にも壊れそうに小さくなっていた。

おばちゃんの家自体は壊れなかったが、家の中は大変なことになっているらしく、おばちゃんの寝ているところに箪笥が倒れてきた。

地震の最初の振動のドンッと突き上げられた表紙に、布団の上に起き上がり、そこに箪笥が倒れたのだが、ちょうどテレビに一度ひっかかり、おばちゃんの上には倒れなかったそうだ。

おじちゃんはそれを見て、テレビを抱きしめて泣いた。

帰り、おばちゃんが私と兄にお小遣いをくれた。

必死で拒む私たちに、頑なにお小遣いを渡すおばちゃん。

帰りの電車で母に「これはおばちゃんの為に使って」とお金を預ける。

帰ってテレビをつけると、神戸の町はまだ燃えている。


これは私のあの頃の記憶。
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プロフィール

Author:池下敦子
大阪で役者をやっています。

KAMEYAMAKAN vol2~生存 トワ キロ リミット~
無事終演いたしました。
ご来場くださったお客様、本当にありがとうございました。

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